同じクリーム色のワンピースを店員に見せて、「仕事用にコーディネートして」と頼みます。
今日はワインレッドのバッグとベージュのパンプス。
別の日には、濃いブラウンのローファーと黒いトートバッグ。
どちらも成立します。
生成AIも少し似ています。
AIは完成済みの答えを一個だけ隠し持っているわけではない
大規模言語モデル(Large Language Model, LLM)は、多くの場合、現在までの文章から次に続く**トークン(Token)**を予測し、その次をまた予測する、という流れで回答を作ります。
「今夜は……を食べたい」の続きを考えるなら、パスタ、鍋、軽いもの、近くの和食など、複数の候補が自然です。
モデルはそれぞれに異なる確率を与え、その中から一つの方向を選び、さらに続きを生成します。
一つの長い回答は、小さな選択の連続です。
開かれた質問ほど分岐しやすい
「誕生日メッセージを書いて」なら、優しい、面白い、短い、少し感傷的など、いろいろな方向があります。
「週末旅行を計画して」なら、交通から考えることも、ホテルから考えることもできます。
だから、違う答え=間違いではありません。
本当に見るべきなのは、条件を守っているか、事実が正しいか、欲しい雰囲気になっているかです。
変化はどこから来る?
生成では**サンプリング(Sampling)**と呼ばれる方法が使われることがあります。
同じ服に合う靴が五足あり、似合う度合いによって選ばれやすさが違う、と考えてください。完全なランダムではありませんが、必ず同じ一足になるとも限りません。
一部のモデルAPIにはTemperatureという設定もあります。大まかには、低いほど確率の高い無難な候補を選びやすく、高いほど珍しい候補も選ばれやすくなります。
一般向けのチャットAppでは、この設定が画面に出ていないこともあります。
事実質問はなぜ似た答えになりやすい?
合理的な答えの範囲が狭いからです。
「東京は日本の首都ですか?」なら、創造的に分岐する余地はほとんどありません。
一方で「秋におすすめのデートプランを三つ」なら候補は大量にあります。
つまり、質問が自由になるほど、答えも分岐しやすいのです。
答えを安定させたいなら
選択肢を減らします。
「いい感じの誕生日メッセージ」ではなく、
10年来の女性の友人向け。80語以内。温かいが感傷的すぎない。Emojiなし。最後は「また一緒に旅行しよう」という意味で終える。
と指定します。
店員に「黒、フラット、通勤、つま先が隠れる、予算はここまで」と伝えるのと同じです。
条件と出力形式が明確なほど、繰り返した時の差は小さくなりやすいです。
違う答えが長所になることもある
タイトル案、服装、企画、アイデア出しでは、毎回同じ答えしか出ない方が困ります。
そんな時は、
前と方向が重ならない案を5つ出して。
と頼めます。
同じ質問に違う答えが返ってきても、「AIの気分が変わった」と考える必要はありません。
より正確には、AIは複数の可能な次の一歩から、一つの生成ルートを進んでいるのです。
同じワンピースに合う靴は、一足だけではありません。
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